まちがいだらけの手紙
   間違いだらけの手紙       

■登場人物■
・青葉………美術専門学校卒業の少女。勘当され、1人ぼっちで生活をしている。
・郵便局員…青年。自分を郵便局員と名乗り、閉鎖された青葉の生活に踏み込む。
・彰…………駆け出しの小説家。青葉の実の兄。
・春香………彰の担当を勤める。彰とは同い年。
・中井聖子…月野亜樹の小説を愛する高校生。



         薄暗い空間に4人の人間が手紙を持って彷徨っている
         中心にはイーゼルがあり、その前に耳を塞いだ青葉がいる

彰    拝啓。
中井聖子 謹啓。
春香   前略。
郵便局員 敬具。
彰    草々。
中井聖子 かしこ。
青葉   聞きたくない。何もかも。
郵便局員 耳を澄ましてごらん。たくさんの言葉が溢れている。
青葉   だからよ!

        青葉が彰の手紙を奪い、破り捨てる

中井聖子 私は自分で自分を閉ざした。
青葉   3年前、桜が咲き誇り始めた季節に、私はここへ来た。全てを捨てて。
青以外全 けれども、あなたの言葉を待っている人がいる。

        青葉以外が一斉に散る
        中井聖子が青葉と背中合わせで存在している
        その中で郵便局員が青葉に何か語りかける
        青葉が郵便局意に近づこうとするがその一歩が踏み出せない
        彰、春香、中井聖子が去る
        郵便局員も去る
        明るい夏の日差し
        イーゼルと向かい合わせで座っている青葉
        イーゼルには空想の絵が置かれていた
        そこへ郵便局員がやってくる
        何かを探しているようだが見つからない

郵便局員 月野さん、郵便です。

        青葉が声に気がつく

青葉   はい。
郵便局員 月野さんですね。今日の郵便です。(青葉に手紙を渡す)
青葉   (手紙を受け取る)どうも。
郵便局員 あの、郵便受けはどこにあるんですか?ちょっと見当たらなくて。
青葉   ありません。
郵便局員 ありません?
青葉   はい。
郵便局員 新聞とかもいつも手渡しで受け取っているんですか?
青葉   新聞をとっていません。
郵便局員 公共料金とか請求来ないんですか?
青葉   口座振替にしてますから。
郵便局員 へぇ。今まで手紙ってどうしていたんです?その都度手で受け取っていたんですか?
青葉   いえ、今まで手紙なんて来なかったんです。この3年間。
郵便局員 3年ぶりの手紙?
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