論理的な男(服装編)
『論理的な男(服装編)』

何事をも論理的に考えてしまう男。A。
彼が機能的な服装について語っている。
Bはメモ帳とペンを持って、真剣に男の話に聞き入る。
インタビューのようである。時々感心しながら相づちを打つが、声は出さない。

明転

A「合理的な服装とは、すなわち機能性を重視したものだ。ファッション性など、機能性の前には些末である。かっこいい服を来てどうなる。
そんなチャラチャラした服装で、寒さを凌げるか?答えは否だ。猿のような体毛を捨てた人類にとって、衣服は体を守る役割を担っているのだ。
だから私が機能的な服装というものを伝授しよう。

まず前提としてファッション性など見た目にはこだわらず機能的な服装について論じるということを提示する。
まずはズボンだ。丈夫で長持ちすることからジーンズを選択することが好ましい。ジーパンとも呼ばれるそれは、元々作業着として開発された物だ。
耐久性は保証されている。
次に、Tシャツはズボンの中に入れる。これは幼少の頃、母親の配慮で風邪をひかないようにと施されたのが発端であると考えられる有効的な手法だ。
実に合理的な判断である。Tシャツを中に入れることによって外界からの空気の侵入を防ぎ、体感温度を保持することができる。単純ながら、
非常に効果的な防寒対策である。
また上着であるが、これはいつでも体温調節ができるように腰に巻いておく。状況に応じて着脱が可能なのである。
次に靴だが、動きやすさを重視してパンプスなどよりもスニーカーが良いだろう。
髪型は気にしなくても良い。月に一度のペースで理髪店へ行っていると多大な費用がかかる。なので髪を切るのは4、5ヶ月に一度で十分だ。
伸びた髪が邪魔なら後ろで結ぶかヘアバンドをつけるといい。
目が悪い場合はコンタクトレンズよりも断然メガネだろう。メガネならば一度買ってしまえば維持費もかからないし、着脱も容易だ。
それに比べてコンタクトは目が痒くなったり着脱や手入れが面倒であったりと弊害が多い。
装備――荷物に関して言えば、リュックサックが有効である。何故なら両手が自由に使えるからだ。これで荷物を持ったままでも買い物や作業ができる。
また、買い物などで追加で荷物が増えた時の為に紙袋を所持しておくのも良いだろう。折り畳みもでき、簡単にリュックに収まる。

以上が機能性を重視した服装である。私が提案する合理的かつ論理的枠組みに沿って組み立てられた完璧な理論の結晶だ。これらの服装を実際に着てもらった。
さあ、見たまえ。これが、機能的な服装だ!」

オタクな格好をした男(C)が出てくる。
スニーカー、ジーパン、(アニメの)Tシャツはズボンの中に、上着は腰に巻き、メガネで、ヘアバンドで、リュックを背負って、手にはポスターが入った紙袋。

B「オタクじゃん」
A「(今気付いた顔で)ああ……」

暗転



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