死体という状態
『死体という状態』

この世界では「死んでいる」状態と「死体」という状態は違うようである。
また、人によっても「死体」の受け取り方も違う。


明転

舞台上に死体が倒れている。
上手に頭を向けている。顔は客席側に見せない。

上手から男1が現れる。
ふと足下を見ると、人が倒れていることに気付く。
ゆっくりと近づき、恐る恐る死体を観察する。
ピクリとも動かないことに怖くなり、ゆっくりと後退り、悲鳴を上げそうになる。が、途中で納得し、

男1「ああ、なんだ死体か」

今度は余裕の表情で死体を観察する。

男1「これはまた、なんて立派な死体なんだ。今どき珍しいなあ」

男2が上手から現れる。
男2、人が倒れていることに気付き、駆け寄る。

男2「(死体に)大丈夫ですか?大丈夫ですか!?」
男1「話しかけても無駄ですよ。死体ですから」
男2「何を言ってるんだあなたは!だってまさか、こんなところに死体が……。まさかあなたがこんなことを!?」
男1「まさか。私が来たらこうなっていたんですよ」
男2「転がっていた!?そんな言い方しなくても……」
男1「転がっていたじゃない。こうなっていたって言ったんですよ。あなた、それは死体に対して失礼じゃないですか?」
男2「失礼なことなんてあるものか!だって、死体ですよ!どうしよう……早く埋めないと」
男1「どうして?」
男2「どうしてって……だって死体ですよ!?」
男1「ええ、死体ですよ」
男2「どうしてあなたはそんなに冷静でいられるんだ」
男1「だって死体ですよ?どうしてあなたはそんなに慌ててるんだ。ここに死体がある、それだけじゃないですか。放っておきましょうよ」
男2「放っておくって……だって死体ですよ!?腐っちゃうじゃないですか!」
男1「腐っちゃいますね」
男2「早く埋めないと」

男2、手で地面を掘り始める。

男1「そんなんじゃ何年経ってもこんな(死体を入れる)大きな穴なんて掘れませんよ」
男2「じゃ、じゃあ、スコップを持って来ます。いや、もっと大きい物がいい。そうだ、家にシャベルがあった」

男2、上手にはけようとする。

男1「待って下さい」
男2「なんですか」
男1「死体、埋めちゃうんですか?」
男2「そうですよ」
男1「かわいそうじゃないですか」
男2「かわいそう!?だって死体ですよ?」
男1「死体ですよ。見てご覧なさい、この悲痛な表情が物語っているじゃないですか」
男2「だってこれは、こうなる直前の顔でしょ!?その後のことは関係ない。それに、悲痛な表情だからこそ、埋めてあげないと!」
男1「そうかなあ?私には、そっとしておいてくれって言ってるように思えるなあ」
男2「あなた、死体が言っていることがわかるんですか!?」
男1「わかるわけないじゃないですか!!だって死体ですよ?」
男2「そうですよ、死体が喋るわけないじゃないですか!そうだ、シャベルを持って来ないと」
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