影法師
『影法師』



登場人物


峰 光輝(みね こうき)…本編の主人公。若くも町奉行の部下にあたる同心(どうしん)という役職に就いている青年。口が悪いが、熱血漢で面倒見がいい。
間 景義(はざま かげよし)…もう1人の主人公。『影法師』の異名を持ち、各地を放浪する旅の医者。過去に金崎と因縁がある。
火立 宗助(ひだち そうすけ)…同心の職に就いている光輝の後輩。光輝を尊敬している。幕府に将来を期待されている神童。
峰 美咲(みね みさき)…町の茶屋で働いている、光輝の妹。宗助に好意を抱いている。
御上…茶屋「群青」の店主である御上。光輝や美咲を、実の子のように思っている。
桐生 慶政(きりゅう よしまさ)…町奉行。光輝と宗助の上司にあたる人物。光輝の父である良蔵とは親友だった。
金崎 利人(かねざき りひと)…光輝達の住む町の領主。金や地位に貪欲な男。
倉沢 良平(くらさわ りょうへい)…金崎の家臣。有能な部下だが、金崎の横暴には反対している。
武士…金崎 利人に仕える下級武士たち。大半は金崎に忠誠を誓っているが、反対派の者達もいる。
町人…金崎の領内に住まう民たち。貧窮を極めている者が多い。中には、団結して領主勢への一揆を企てている者も。
将軍…幕府の長であり、国の統括者。




ナレーション「時代は江戸時代初期。この物語は壮大な日本の歴史の裏に刻まれた、一人の少年と一人の医者がくり広げる、ちょっとした物語で御座います。」


明転。舞台には木刀を持った光輝と宗助。
しばらくして、お辞儀を交わす2人。
宗助(以下、宗)「よろしくお願いします、光輝さん!」
木刀を正眼に構える宗助。
光輝(以下、光)「おう、かかってこい!」
宗助と光輝による殺陣。勢いよく攻め続ける宗助だが、すべて光輝にいなされる。
しばらくして、光輝が宗助の木刀を弾く。
宗「…あっ!」
すかさず光輝が寸止めで一本。
光「勝負ありだな!」
宗「さすがですね…。参りました。」
木刀を下げる光輝。再び2人でお辞儀。
宗「ありがとうございました!わざわざ非番の日に稽古をつけていただいて…。」
光「あぁ、気にすんなよ。可愛い後輩の為だからな。」
宗「やっぱり光輝さんは強いですね!全然敵いませんよ。」
光「そうか?お前もいい太刀筋になってきてるぞ。」
宗「本当ですか!?」
光「おう。でも、まだ動きがかてぇな。もっと相手の動きを見て、その隙をついて…ズバッと。(木刀を振る)ただ突っ込むだけなんざ、猪と同じだぜ?」
宗「はぁ…そうですね。」
光「まぁ、お前ほどの腕があったらそこらの曲者にゃ楽勝さ。な、『神童』の火立宗助君?」
宗「そんな…。オレが神童だったら、光輝さんはどうなるんですか?」
光「はっはっは!俺は腕っぷしはあっても言うこと聞かない悪ガキで評判だからな!奉行のお偉いさん方は、お前に期待してるだろーぜ!?」
宗「笑い事じゃないですよ…。せっかく凄い剣の腕があるのに、もったいないです。」
光「一応仕事はこなしてるからな、そのおかげでクビにゃならねーのさ。」
光「…しっかし、この頃はよく俺に稽古受けたがるな?」
宗「ええ…いざというときの為に、腕は磨いておきたいですし。」
光「なんだぁ?いざというときってのは?」
宗「例えば…戦が起こったときとか。」
光「はははは!ねぇねぇ!将軍様がこの国を治められてからの数年、大きな戦があったか?」
宗「まぁ…ありませんが…でも。」
光「俺達の仕事は町のならず者共をとっちめることだ。それも大事なことだろ!?」
宗助の頭を叩く光輝。
宗「ちょ、ちょっと…やめてくださいよ。」
光「叩きやすい位置にあるお前の頭が悪いぜ!」
宗「…どういう意味ですか、それは。」
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