スイッチプレイング (30分)
〜僕がまた居なくなるまで〜
    夜中、かなえの部屋。
    
    しほは週刊誌を、かなえは都市伝説本を読んでいる。
    かなえは寝転がって同じページをずっと見ている。
   
    テーブルの上はスナックなどで散らかっている。
    しばらくして、お互いの顔を見ずにぽつぽつ話し始める。

しほ …なんか、ごめんね。
かな んー?
しほ 気を使わせちゃって。
かな ばか。あんたこそ気ぃ使うんじゃないの。
しほ …うん。

    間。

かな 何、今の間。告って振られたみたいな気まずさ。
しほ え?
かな 「え?」じゃないよ。そこは「違うだろ!」みたいに突っ込んでくれないと。
   聞き逃されたボケをもう一回言わされるほどキツイ仕打ちはないのよ。
しほ あぁ、ごめん。その、ありがとう。
かな 何が?
しほ こうやって、相手してくれて。
かな 暇だからだって。
しほ ありがとう。
かな え、私が暇でありがとうって事? 新しいバイトが決まらなくて結構大変なん
   ですけど。
しほ ごめん。
かな だから!「違うだろ!」みたいに突っ込んでくれないと。
しほ 違うだろ!
かな 今か! 今は突っ込むトコじゃないでしょ。
しほ あぁ、そうか。…違っただろ!
かな 何、それ?
しほ 自分への突っ込み。
かな 斬新だなー。っていうか、それは普通にボケ。一周して普通になったね。
しほ 斬新過ぎたかー。
かな まぁ、段々とね。
しほ え?
かな 段々と慣れてくしかないよ。
しほ …突っ込むタイミング?
かな 違うだろ! あんたの在り方だよ! 過ごし方! 真面目な話!
しほ あぁ、そっちか。
かな 一緒にいた人がさ、いなくなって。急に虚しくなるって言うか、ぽっかりした
   心境だとは思うんだけど。そのぽっかりはこれから別の何かで埋まっていくん
   じゃないかな。楽しい事はこれからも絶対あるし。まぁ、嫌な事もあるだろう
   けど。それもまた人生、みたいな。
しほ そうだね…。
かな 私、しほが後追いとかしちゃうんじゃないかって心配だったんだわ。
しほ …。
かな 怖いわー、今の無言。怖いわー。認めた様なものじゃない。
しほ しないよ。
かな ホントに?
しほ ホントに。
かな ホントーに?
しほ ホントーに。
かな じゃあ、許す。
しほ 許す? 怒られてたの私?
かな 話を戻す。段々とって事だよ。「前の恋を忘れるには次の恋」みたいのが言え
   る状況じゃないし、そもそもあんたってそれが出来るタイプじゃないし。
しほ …そうだね。
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