学芸会
【学芸会】


        舞台上に、椅子が2脚。
        下手から山口有希子が来て、椅子に座る。
        有希子、プログラム表を眺める。
        下手からバタバタと、カバンと三脚を持った江田幹子が来て、有希子の前を通り、椅子に座る。
        目の前を大きな荷物を持った者が通り、怪訝な顔をする有希子。
        
幹子 「(乱れた息を整え)まだ2年2組は始まってませんよね?」
有希子「ええ。この次です」
幹子 「(安堵)良かった〜」
有希子「あの、2年2組の保護者の方ですか?」
幹子 「ええ。もしかして、あなたも?」
有希子「はい。山口です。山口里奈の母です」
幹子 「そうですか。里奈ちゃんの」
有希子「ご存知ですか?」
幹子 「初耳です。あ、私、江田です。江田友美の母です。どうかお見知りおきを!」
有希子「お見知りおき…」
幹子 「(見回し)結構、人いますね」
有希子「みんな我が子の晴れ姿が観たいんですよ。会社を休んでまで観に来るお父さんもいますからね」
幹子 「平日だからもっと少ないと思ってました」
有希子「学芸会、初めてですか?」
幹子 「そうなんです。えっと…」
有希子「山口です」
幹子 「山口さんは経験者?」
有希子「上にもう一人いますから」
幹子 「そうですか。あ、急いで準備しなくちゃ」

        幹子、三脚を広げる。
        三脚の脚が有希子の足に当たるがお構いなしに、目一杯三脚の脚を広げる。

有希子「ちょ、ちょっと江田さん。脚! 脚!」
幹子 「(照れて)よく旦那にも言われるんです。お前の脚線美に貪りつきたくなるって」
有希子「違う違う! 三脚の脚をもう少し狭めて欲しいの。マナーがあるでしょ。みんなの邪魔になるし」

        有希子の言葉もほとんど聞かず、カバンの中をあさる幹子、突然、悲鳴を上げる。

有希子「ビックリした! 何?」
幹子 「ない! ビデオカメラがない! 落とした? いや、違う。家? 入れ忘れた? (思いだし)あ、昨日、練習した時に使ってそのまま…。(落胆)あー。あー! あー! (有希子に)あなたの貸してくれます?」
有希子「持ってませんよ」
幹子 「え? 我が子の学芸会にビデオカメラ無し? 何しに来てるんですか?」
有希子「観に来てるんです。ビデオカメラより、自分の目で観た方がいいんです」
幹子 「(聞いてなく)パパに怒られる〜。(泣きそうになり)今から取りに帰る? 往復で40分弱…開始まであと僅か。間に合わないじゃん! 先生に言って1時間遅らせてもらおう(出て行こうとする)」
有希子「(幹子を制して)1時間も遅らせるなんて無理ですよ。みんな自分の子供の出番を今か今かと待っているんだから。そもそも、ビデオカメラ忘れたあなたが悪いんでしょ」
幹子 「何? じゃあ、悪者は私だけ?」
有希子「(少し考えて)…他に誰がいるの?」
幹子 「(落胆)は〜。(呟く)どこでもドアが欲しい…」
有希子「学芸会の模様は、先生方が録画してるから、後でそれをもらえばいいんじゃない?」
幹子 「でも友美メインじゃないでしょ? バストショットとかないでしょ?」
有希子「そりゃそうだけど」
幹子 「でも、無いよりはいいか。よし、ビデオはそれで勘弁してやるか」
有希子「やけに上から目線ですね」
幹子 「デジカメに集中しよ(三脚にデジカメをセットする)」
有希子「三脚は使うんですね…」
幹子 「貸して欲しいですか?」
有希子「(カバンから写ルンですを出し)私は手持ちで十分」
幹子 「今時、写ルンです? 今やデジタル化が進み、地デジやブルーレイだ言ってるこのご時世に、写ルンです?」
有希子「すみません、古くて」
幹子 「(奪い)まだ売ってるんだ。ハハハ、おもちゃみたい」
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