じつのなんとか
「じつのなんとか」

 男は女に自分が「実の恋人」ではないと語り始める。
 「実の恋人」とは、「実の親」や「実の兄弟」といったものと同じようなものらしいのだが・・・
 
 /

「実の恋人」ではない、「義理の恋人」である、「赤の他人」であるというのだが、恋人同士も結局は「赤の他人」なのである。
 しかし「恋人」という単語は、連呼するほどに気恥しく感じてしまう、特別な関係を示す言葉なのだろう。


 /


  男女が仲良く喋っている。

女「さっきの映画、ほんとうに感動しちゃったよね! 実の親子の再会のシーンめちゃくちゃ泣いちゃった!
  育ての親のことを考えるとすごく切ないけど、やっぱり、実のお父さんと会うことができてよかったって思うんだ。
  ねえ、そう思わない?」

  男、口を閉ざして俯く。
  女、怪訝そうに首を傾げ、男の顔を覗き込む。
  男、神妙な面持ちで口を開く。

男「実は俺、お前にずっと黙ってたことがあるんだ」
女「・・・なに、突然?」
男「実は俺、お前の実の恋人じゃないんだ」
女「え?」
男「ずっと言おうと思ってたけど、ずっと言えずにいたんだ。すまない」
女「どういうこと?」
男「俺とお前は、本当の恋人じゃないんだ」
女「・・・うそ」
男「嘘じゃない」
女「嘘よ!」
男「本当なんだ! 俺とお前とは実の恋人じゃあない。
  本当は血の繋がりもなんの繋がりもない、何の関係もない、赤の他人なんだ。義理の恋人だったんだ」
女「どうして・・・。どうしてそんな大切なことを今まで黙っていたの!?」
男「すまない。お前を騙し続けるのは俺だってずっと心苦しかったさ。
  でも、どうしても言えない事情があったんだ」
女「言えない事情? 何よそれ。いったいなにがあったって言うのよ!」
男「すまない。それは言えないんだ。わかってくれ」
女「・・・じゃあ・・・だったら、あたしの実の彼氏は誰なの?」
男「それは言えない。
お前の彼氏になると決めたその日に、お前の本当の彼氏と約束したんだ。
  お前に、本当の彼氏のことは告げないって」
女「そんなの勝手よ! 私にだって、真実を知る権利があるわ!
  誰なの? 私の実の恋人は誰なのよ!」

  男2が現れる。

女「木村くん・・・?」
男「木村、どうしてお前がここに・・・」
男2「・・・俺、もう耐えられなくて・・・本当のことを伝えたくて」
男「木村・・・?」
男2「愛梨、俺はずっと君のことを見ていた。君のことを考えない日はなかった」
女「まさか・・・木村くん・・・?」
男2「そうだ、俺は、愛梨の実の恋人なんだ」

  口元に手をやり、驚きを隠せない女。

1/2

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。

ホーム