昼下がり、第三公園にて
「昼下がり、第三公園にて」
舞台はどこにでもある公園である。中央にはベンチがあり、その近くには吸殻入れが設置されている。


明転。ベンチに座っている男1。少し考え込んだ後公園内を散策するが、程なくしてまたベンチに座り込む。上手より男2が出てくる。喫煙場所を求めて、ベンチ横にある吸殻入れの近くに向かう。その途中男1と目が合い軽く会釈。

男2「失礼。一服させていただきますよ」(煙草を取り出す)
男1「あぁどうぞご自由に。ここは皆の公園ですからね。煙草くらい好きに吸ってください」
男2「(煙草を吸いながら)あなたも一本いかがですか?」
男1「いえ、私はそういうのはやらないと決めているので」
男2「そういうのと言うと・・・」
男1「えぇ、煙草に酒。賭け事や女遊びといったものです。どうにも性に合わないものでして」
男2「それはそれは、立派な精神をお持ちのようだ」
男1「そんなものではありませんよ。ただ自分の知らないものに手を出すのが怖いってだけでしてね」
男2「いい心がけですね。私なんかはすっかりそういったものに嵌まってしまって、中毒みたいになってしまっている。(携帯が鳴る)失礼」

男2、携帯を取り出すとベンチから離れる。男1、再び自分の周囲を見渡すが、目当てのものは見つからない。男2、話をしながらその様子を見ている。

男1「はぁ・・・、どこにいったのかなぁ」
男2「あぁ、それじゃ。(男1に)失礼しました」
男1「いえいえ」
男2「何か探し物ですか?」
男1「え?」
男2「いえ、さきほどそのような素振りをなさっていたようですから」
男1「あぁ、いえ大したものでは無いのですが、ちょっとね」
男2「何を無くされたんです?私でよければ力になりますよ」
男1「いえいえ、人様に手伝ってもらうようなものではありませんから、それは」
男2「さみしいこと言わないでくださいよ。ここで出会ったのも何かの縁ですからね。私に任せてくださいよ」
男1「本当に大丈夫ですから」
男2「探し物ですよね、何があるかな。・・・財布とか?」
男1「いえ、違います。それはものではありませんから」
男2「ものじゃない。じゃあペットとか?」
男1「私はペットを飼っていませんから」
男2「分かりました。じゃああなたは人探しをしてるっていうんですね」
男1「まぁ近からず、遠からずってところですね」
男2「どうも歯切れが悪いですね」
男1「ヒトではあるのですが、それが生きているといっていいのかどうか私には分からないものでして」
男2「どうにもおかしな話だ。ますます興味が湧いてきましたよ。さぁ話してください、一体何を無くされたんです?」
男1「聞いて驚かないで下さいよ」
男2「えぇ」
男1「本当に大したものではないですから」
男2「分かりましたから、ほら言っちゃって下さいよ」
男1「・・・・・・影です」
男2「影・・・?」

静寂。蝉の鳴き声だけが鳴り響く。男2の携帯が鳴る。

男2「失礼」

男2、再びベンチから離れる。男1はうなだれている。

男2「あぁ、分かってるよ。(男1に)失礼しました」
男1「いえ」
男2「で、探し物のことですが」
男1「えぇ」
男2「影を無くされたのですか・・・?」
男1「はい、そうなんです」
男2「とても信じられる話では無いですが・・・、確認させていただいても?」
男1「えぇ、構いませんよ」

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