However with Vampire
青きプリマドンナ
『However with Vampire〜青きプリマドンナ〜』
脚本・演出  藤ヶ谷レイ

CAST
    V ―ブラッド・ハーカー
    記者―ジャック(ジェシカ)フィールド
    女優―ミナ・マリー
    女性―アンナ・マリー

#1   1977年 東欧のとある駅
緞帳が開き一人の女性が立っている。
記者が入ってくる。二人とも列車を持っているようだが、
しばらくして記者が女性に話しかける
記者   こんにちは。まだ列車は来そうにもありませんね。あなたもオリエント急行でご旅行ですか?
女性首を振る
記者   では、誰かをお待ちですか?
女性、軽くうなずく
記者   そうですか。オリエント急行は多くの人を運び、多くの人の人生を運んできますからね。かくいう私も以前この列車に乗って運命が変わった人間の一人なんです。私は、13年前にオリエント急行に乗車したんです。そこで、私は誰にも信じてもらえないような不思議な体験をしたんです。
女性、記者の話が気になりはじめる
記者   あなたはヴァンパイアを信じますか?
女性、怪訝な表情で記者を見つめる
記者   まあ、無理ですよね。あれは空想上の存在と言われてますからね。では、ヴァンパイアウイルスをご存知ですか?
女性、何か驚いたようだ
記者   ご存じなくて当然です。ヴァンパイアウイルスは恐ろしい病原体です。このウイルスに感染したものはほぼ100%の確率で死んでしまうんです。「ほぼ」といったのは万に一つ、生き残ることがあるからなんです。しかし、このウイルスに感染し生き残ったものは、もしかしたら死ぬよりつらい思いをするのです。それは生き残った者が不老不死のヴァンパイアとなるからです。
女性、記者を見つめる。
記者   この話に興味がおありですか?では、私が体験した嘘のような本当の話をしましょう。あれは、今から13年前の出来事です。私はフリーのライターとして一獲千金を夢見て、その数十年前に起こった「もうひとつのオリエント急行殺人事件」の真相を探るべくオリエント急行に乗車することを決めました。そのために私は、1964年の夏の終わりのパリ東駅にいたのです。
照明が切り替わり、記者だけに。女性は去る
記者   停車しているオリエント急行はとても美しい車両です。さすが「青きプリマドンナ」という愛称がつけられるのもわかる気がしました。そして、パリ東駅はオリエント急行に乗る人たちで大変混雑していました。ここから、トルコのイスタンブールを目指してオリエント急行は出発するのです。そう、ここは旅立ちの場所。これからの旅に胸を躍らせる人もいれば、花の都パリで夢破れて失望の中、田舎に帰る人間もいます。
Vと女優が記者のセリフに合わせて出てくる。
記者   様々な人々の思いや人生を乗せてオリエント急行はパリを出発します。
出発のベルが鳴る
記者   さあ、オリエント急行の出発です!

OP(ダンス)

#2   ダブルブッキング
女優が入ってくる
女優   さようなら、花の都パリ…
女優が感慨にふけっていると記者が急に入ってくる
女優は驚く
記者   これは失礼。驚かせてしまったようですね。これからイスタンブールまでよろしくお願いしますね。
女優、警戒している
記者   どうかしましたか?そんなに警戒して。
女優   二人部屋で男性と同室だとは思ってなかったので。かの有名な豪華列車のオリエント急行であれば、たとえ2等客車であっても、それくらいの配慮はしてくれると思っていたんですが…
記者   あの、私、女なんですけど…
女優   え?では、なぜそのような恰好を?
記者   すみません。私こういうものでして…
記者、名刺を差し出す。
女優   フリーライター…
記者   ええ。普段は「ジャック・フィールド」の名前でライターの仕事をしています。この格好も仕事のためです。この世界じゃまだ女の身分は低いんです。だから、この格好を。
女優   なるほど。
記者   もちろん本名はジャックではなく、ジェシカです。ジェシカ・ドナルドソン。
女優   私はミナ。ミナ・マリー。
記者   ミナね。道中よろしく。
女優   こちらこそ。
女優は窓の外を見ている。記者は室内チェックを始める。
記者   あ、こっちは寝室なのね。
記者は何か見たようで驚く。
記者   誰かいる!
女優   何を言ってるの?この部屋は二人部屋よ!
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