アマヤドリ
平成28年度 栃木県総合文化祭演劇研究大会
作新学院高校演劇部 上演台本

「アマヤドリ」
西井宙輝・嶋田涼太・高梨辰也 作

【登場人物】

水田さゆり 喫茶店「アマヤドリ」の店主。
水田マリ  さゆりの娘。高校を卒業したが進路はいまだ未定。
樋田陽介  マリの同級生。大学を受験したが結果はまだ届いていない。
吹田晃良  マリの同級生。音楽の専門学校に進学を決めている。
小田優也  マリの同級生。高校最後の時期は不登校気味だった。
西田敏子  喫茶店「アマヤドリ」開店当時の客。
熊田香織  花屋「カサブランカ」の店員。さゆりの元同級生で当時の恋敵。
翔太    喫茶店「ひなたぼっこ」の息子。
美希    翔太の同級生。
祐男    翔太の同級生。
悟史    翔太の同級生。


【時と場所について】

高校生の時間で言えば、3月の卒業式の終わった後、まだ新しい環境に飛び込む前の宙ぶらりんな時期である。
大学入試の合格が決まっている者も多いが、まだ結果が出ておらずピリピリした空気を残している者もいる。
外はまだ寒い。
場所は地方都市の商店街。
喫茶店、衣料品店、古本屋、花屋など、古き良き佇まいの店が立ち並んでいるが、その多くはすでにシャッターを降ろしている。
喫茶店アマヤドリはその中にあり、地元の人にそこそこ親しまれてきた。
とはいえ、およそ高校生が日常的に立ち寄るような魅力のある店ではない。
町には高校がひとつしかなく、隣町との距離もあるためか、入学する者の大部分はこの町の住民である。
高校としての偏差値は、まあ平均的な普通科の学校といったところ。
卒業後の進路は、大学進学を志す者もいれば、専門学校へ進学する者、就職を希望する者など、様々である。
それでも多くの若者は、年頃になると町の外に出ることに憧れを持つようである。


   開幕。
   喫茶店の中で、ひとり開店の準備をするマリ。
   箱の中からレコードの機材を取り出す。
   感慨深そうに、かつてそれが置かれていた台の上に乗せる。

マリ   ……よし。

   扉が開き、翔太が入ってくる。
   翔太、店内を見回す。

翔太   すげえ……。
マリ   あら、どうしたの。
翔太   本格的。
マリ   そりゃそうでしょ。当たり前じゃない。
翔太   すごい、これ全部ひとりでやったの。
マリ   だいたいは引越し屋さんだけどね。まだまだ準備はこれからよ。
翔太   ねえ、みんなにここを見せてもいい。
マリ   いいけど作業の邪魔はしないでね。
翔太   うん。
マリ   物壊したら弁償してもらうからね。
翔太   わかってるよ。

   翔太、出て行くと思いきや、扉の前でもじもじしている。

1/26

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。

ホーム