間男(あいだおとこ)



「間男(あいだおとこ)」(作・井口時次郎)



【登場人物】
 
  男1

  男2


***脚本ここから***

        暗闇。
        二人の男の声だけがする。

男2  なあ、やっぱやめようぜ。くだらないって。
男1  くだらないからおもしろいんだよ。早く行けよ。
男2  狭いんだよ。
男1  おまえビビッてんじゃないだろうな。
男2  違うよ!とにかく狭いんだよ。真っ暗で何があるかわかんないしさ。
男1  ケータイのライトあるだろ。あれで照らせばいいじゃん。
男2  あ、そうか。
男1  頭悪いなお前。
男2  うるさいんだよ。あれ、ケータイどこだっけ?ケータイは・・・と。
    あっ!!
男1  え?あっバカ放せよ!!
二人  あーーーーーー!

        明かりがつくと、男が二人。
        背中合わせになり、片足をあげて窮屈な姿勢で立っている。

男1  ・・・どうすんだよ、これ。
男2  知らないよ。
男1  おまえのせいだろうが。
男2  俺?
男1  そうだよ、おまえが引っぱったからだろ?
男2  真っ暗闇で転んだら誰だって手近にあるものにつかまるだろ。
男1  迷惑なんだよ。完全に挟まってるじゃねーか。
男2  俺のケータイ、どこいっちゃったのかなあ。
男1  見えるわけないだろ。真っ暗なんだから。
男2  お前のケータイで照らしてくれよ。
男1  あ?しょうがねえなあ。(モゾモゾ)っていうか無理。ポケットに手、届かないし。
男2  えー、俺のケータイはー?
男1  うるさいよ。今、それどころじゃないだろ。この状態先に何とかしないと。
男2  きれいに挟まっちゃったなあ。
男1  マンガじゃあるまいし。ビルの間とか挟まるか普通。
男2  ホントにマンガみたいだねえ。
男1  ・・・お前、楽しんでない?
男2  そんなわけないだろ。苦しいって。
男1  いや、絶対楽しそうだよ。(気づいて)おまえ、まさかホモとかじゃないだろうな。
男2  (びっくりして)違うよ。
男1  気持ち悪いんだよ。(またも気づく)モゾモゾ動くなよ。
男2  おまえがそんなこと言うから。抜けようとしてるんじゃないか。
男1  痛い、痛いよ。おまえ、無理すんなって。いた、いたたたた。
男2  俺だって痛いんだよ。

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