渋谷妄想迷宮旅行
.渋谷妄想迷宮旅行
渋谷妄想迷宮旅行
 
              はりとら版
              令和2年5月5日作成
              
              作 山上祐輝
.0話 妄想にも似た夢を見たので
0 妄想にも似た夢を見たので 

暗転

少女(声)「12月22日(月)7時。」

明転。
舞台中央、後ろ向きに男が立っている。
その前に、少女が客席に向かって立っている。

男「多恵、好きだ!」

少女「そういった彼の顔が、私の涙で、ぼやけて見えなくなるのを、私はとても寂しく思った。でも、そうしなきゃいけない。忘れなきゃいけない。強く自分にそう言い聞かせた。でも、彼の向こうにうっすらと見えた109(イチマルキュー)の文字だけ、クリームに乗っかったイチゴのように、鮮明に覚えていた。」

目覚まし時計の音。
男は、去っていく。

少女、手に持っている鍵付きのノートに気が付く。

少女「これは、夢?それに、この鍵付きの手帳は・・・。なんでだろう、私、探さなきゃいけない気がする。あの人を。すごく!」

オープニング。
タイトル、渋谷妄想迷宮旅行。
暗転。

.1話 渋谷の夢は迷宮に誘う
1 渋谷の夢は迷宮に誘う 

電車の音。
人込みの音。

少女「12月23日火曜日。時刻は12時を少し回った位。私は、かの有名な山手線、というやつに乗っている。噂に聞く、東京の電車。東京の電車と言えば山手線。正直、祖霊画の電車は知らない。東京を回るメリーゴーランドのような電車は、ぐるぐると、私を目まぐるしい都会の喧騒の渦に巻き込んでいく。電車の中は、東京!と聞いていた割には、意外に人が少ない。いや、多いのか。ス・シ・ズ・メの電車は、果たしてこの電車なのだろうか。少ないは少ないで不安になる。まあ、でもそれもいい。せっかくの冬休みを使った一大旅行、一人旅なのだ。スシズメなんかに負けていられない。」

車掌の声「次は、渋谷です。〜〜線はお乗り換え下さい。」

少女「〜〜線は、私には聞きなれない名前だったので、いいや。とりあえず、なんか色々と他の電車があるらしい。まるで迷路だ。」

電車の開く音。

少女「電車のドアが開く。私は、そこそこのリュックと、鍵付きの手帳を持ってホームに足を降ろした。冬の風にしては暖かい、クリスマスらしい音楽を含んだ風が、ヒートテックを着込んだ私にまとわりつく。天井には、駅のホームには似つかわしくない位の赤と緑の飾りが溢れ、ゴールドのベルと、サンタクロース、きれいな飾りがちりばめられている。これが都会・・・。」

少女、辺りを珍しそうに眺める。

少女「クリスマス・・・彼と来たかったな・・・ん?彼?私は、何か変な感じを覚えた。彼氏?って?」

少女、しばし考え込む。

少女「てこてこと改札を探して彷徨いながら、頭にふわふわと浮かんだ"もやっと"を転がした。私は、そんなに彼氏が欲しかったのか、だからあんな夢を・・・。」

少女、振り返って夢を思い出す。
男が通りすがる。

1/7

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。

ホーム