死神少女は最後に天国にいく
登場人物
男(36)   ホームレス
少女(15)  幽霊



   男が公園を徘徊している(ゴミ箱あさるなど、公園暮らしの様子)
   少女登場、男に声をかける。

少女 「ねぇ、なにしてるの?」
男  「えっ? あ、俺……いや、えっと……君こそ時間わかってる? こんな夜中に」
少女 「質問してるのはこっち。何してんの?」
男  「俺は……」
少女 「ご飯探してゴミ箱あさってたの? 公園暮らしってのは大変ね、帰る家もなければご飯もない。ホームレスって言うんだっけ、そういうの」
男  「……家どころか何も持ってないよ、俺は。それより君だ、夜中の二時に女の子が出歩くもんじゃない」
少女 「余計なお世話だし、その心配もない」
男  「えっとな……あ、じゃぁお化けが出るぞ? 今は丑三つ時って言ってな、お化けが出る時間なんだ」
少女 「馬鹿にしてんの? お化け怖がるような年じゃないし」
男  「君、何歳?」
少女 「……十五」
男  「まだ子供じゃないか。早く帰りなさい、親が心配する」
少女 「心配しないし、捨てられたから、私」
男  「捨てられた?」
少女 「あ、違う。お母さんはすごくいい人よ。今は家にいない、病院にいるけど」
男  「病気なのか……」
少女 「私を捨てたのは父親のほう。最悪な男でさぁ、私を身ごもったお母さんを突き飛ばして逃げたの、子どもなんておろせ俺には関係ないって怒鳴って。お母さんとはそのまま別れたから父親、私の顔すらわかってない」
男  「……そうか」
少女 「でもそのあとの人生が面白くてさぁ。あ、学生だったんだけどね、お互いに。学校行きづらくなって就職もできなくて親とも縁切って、思い切って公園暮らし始めたらそのまま抜け出せなくなって。今の今になって後悔してるの、家どころか何も持ってないって」
男  「……それって」
少女 「まるで俺じゃないか、って思った?」
男  「なんでそんなこと……」
少女 「お母さんが私を身ごもったの、十五年前なの。あれー? 私さっき、何歳って言ったかな?」
男  「十五、って、まさかお前、あの時の俺とあいつの……」
少女 「お母さんには似てると思うんだけどなぁ」
男  「いや、俺だろ……俺の若い頃と、同じ顔してる」
少女 「男顔ってこと?嫌なんだけど、それ」
男  「どうして俺が父親だってわかった?」
少女 「聞いたから。見てたしね、ずっと」
男  「見てた?あいつ、俺のこと見てたのか?」
少女 「お母さんじゃないよ。お母さんは何も知らない、別の人……人?から聞いた」
男  「あぁ、そんな仕事があるもんな、世の中には。で、そいつから聞いたのか、ここの公園で暮らしてるクズがお前のオヤジだよって?」
少女 「……お母さん、市立病院にいるの」
男  「は?市立病院?」
少女 「今日、あの世へ行くことになってる」
男  「あの世って、死ぬのか? あいつが?」
少女 「お母さん、あんたに会いたがってる。今日を逃すともう機会なんてない、だから私、あんたのとこ来たの」
男  「あいつが俺に……嘘だろ? 俺、あいつに酷いことして……」
少女 「好きになったものは仕方ないでしょ?ずっとあんたが好きで、恋愛だってまともに出来なくて、お母さん苦しんでた。だから行きなさいよ、最期なんだから」
男  「最期……会ってくれるかな、俺に」
少女 「だから、ずっと会いたがってたんだってば!」
男  「……行く。会いに行く、市立病院だったな。そうだ、病院に入るなら服装……」
少女 「服は気にしなくていいから、それより髪と髭。ばっさり切って髭も剃って、昔の面影がでるようにしといて」
男  「髭かぁ、確かにな。あいつ、俺のことわかるかな?」
少女 「顔さえ見えればいいから。あ、顔は綺麗なままでいてよ? 顔だけは怪我しないように」
男  「顔に怪我って、大怪我だろそんなの」
少女 「あとはお風呂……はないんだっけ?とにかく体洗っといて。臭いとみんなイヤだろうから」
男  「わかった。頑張ろう、生まれ変わるんだ俺は、今日生まれ変わる」
少女 「……わかってんじゃん、がんばって」
男  「何時に行けばいい? 面会時間てのがあるんだろ、たしか」
少女 「昼過ぎ……二時くらい、たぶん」
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