アップルパイ・アップルパイ・アップルパイ
『アップルパイ・アップルパイ・アップルパイ』

【登場人物】3名(男性2・女性1)

セリア:ヒヤク王国の女王。国王だった夫キャンドゥが亡くなり女王となった。息子のローソン王子は6歳。
ダイソー:将軍。独り身。
ワッツ:ダイソーの腹心。妻と二人の息子がいる。

ローソン:音声のみで台詞は一言。

【上演時間】40分

【あらすじ】

 ファンタジー&サスペンス&コメディ。

 女王セリアの息子ローソンは寝物語で母が祖父・祖母・父を毒殺したことを聞かされる。
 ローソンは将軍ダイソーに助けを求めるが、それを聞いたダイソーはクーデターを企て、セリアを捕らえてしまう。

 場面転換はほぼ無し。

【本編】

■暗闇の中。音声のみ(録音でもOK)

セリア:むかしむかし、あるところに貧しい少女がいました。
    野心があった少女は魔法使いに弟子入りして、沢山の魔法を覚えました。
    空を飛ぶ魔法、炎や水の操り方、毒リンゴや惚れ薬の作り方。
    少女が美しく成長した頃、魔法使いに「もうお前に教えることは何もない」と言われました。
    それから間もなく、魔法使いは死にました。
    その後、少女は王子様と婚約しました。
    王子様を惚れされるのは簡単でした。
    父である国王や国民は突然の婚約に驚き、反対しました。
    少女は二人の婚約を羨み、恨み、妬む心を集めて毒リンゴを作りました。
    ある日、突然、王様が死にました。
    王子様は王様となり、二人に世継ぎの王子が産まれた頃には、国民は少女に服従するようになりました。
    ある日、突然、王様が死にました。
    女王となった少女は国を支配し、世継ぎの王子と幸せに暮らしました。
    めでたしめでたし。

ローソン:お母様、このお話は「めでたしめでたし」なの?
セリア:そうよ。だって、今、私は幸せだもの。

 音楽。

■明転。ヒヤク王国(キングダム)、玉座の間。
 縄で縛られた女王セリアと、その前にいる将軍ダイソーと部下ワッツ。
 その周りを数十人の兵士が取り囲んでいる。(兵士の台詞はありません。舞台装置として絵を描くなりしてください)

ダイソー:ご機嫌はいかがですか、セリア様。
セリア:まあまあよ。たまには縛られるのも悪くないわね。いつもは縛るばかりだから。
ダイソー:今、縄を解きます。窮屈な思いをさせて申し訳ありませんでした。
セリア:あら、自由にしてくれるの?
ダイソー:女性を縛る趣味はありません。ワッツ、縄を解け。
ワッツ:よろしいのですか? 女王陛下は魔法を使えるという噂もございますが。
ダイソー:構わん。本当に魔法が使えるならこうも容易く捕まえることは出来んだろう。セリア様は魔法使いの弟子であったにも関わらず、魔法は一切使えんのだ。
セリア:ダイソー将軍は女性を縛る趣味はなくとも、大勢の男達で取り囲む趣味はあるのね。
ダイソー:セリア様が何かを出来るとは思えませんが、念の為です。
ワッツ:(縄を解いて)よっと。はい、解けましたよ。
セリア:(溜め息)やっと楽になったわ。きつく縛りすぎなのよ。次はもっと優しく縛ってちょうだい。
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