アイツは悪霊アイウエオ
アイツは悪霊アイウエオ

作・新堀浩司

人物

小松崎七瀬(こまつざきななせ)
悪霊
天使
三田村先生(みたむらせんせい)

※天使と三田村先生は兼役可。


        第一場
        幕が開く。七瀬にスポット。

七瀬  「それはまさに、晴天のヘキレキでした。ある日のことです。演劇部の部長である私が基礎練習に精を出していると、顧問の三田村先生がやってきて、私にこう言いました(以下、七瀬の一人芝居または声だけ袖から出す)」
三田村 「小松崎さん」
七瀬  「あ、先生こんにちは」
三田村 「頑張ってるわね」
七瀬  「はい。部長として、新入部員の見本にならなくちゃいけませんから」
三田村 「でも新入部員、いないわよね」
七瀬  「まあ、そうなんですけど」
三田村 「ていうかあなた以外に部員がいないわよね」
七瀬  「そうなんですけど、でも、もしかしたらこれから先部員が入るかもしれませんし」
三田村 「先生、小松崎さんが頑張ってるのは分かってるけどね。部員一人のへっぽこ演劇部に、この場所を部室として与えることは、もうできないわ」
七瀬  「ちょっと待ってください」
三田村 「明日からここはじゃんけん同好会が使います」
七瀬  「そんな!じゃあ私は、演劇部はどうなるんですか?どこで練習すればいいんですか?」
三田村 「心配しないで。ちゃんと用意してるわ。校舎の裏に、今は誰も使っていない物置があるのよ。そこで練習しなさい」
七瀬  「物置ってそんな。暗いし、冷房もないし、幽霊とかでそうじゃないですか」
三田村 「幽霊?バカねえ、大丈夫よ。ちゃんと封印してあるから」
七瀬  「え?今なんて言いました?」
三田村 「じゃあ、頑張ってね」
七瀬  「そんな、ちょっと待ってください先生!先生ってばー!・・・こうして私は練習場所を取り上げられ、薄暗い物置に追いやられることになりました」


        明転。舞台はとある学校の校舎裏にある物置。雑然としており、薄暗
い。置いてある物もほとんどが古びているが、唯一脚本だけが真新しい
状態で一冊置いてある。七瀬、壁のスイッチを押すと電気が点く。

七瀬  「電気がつくのは良かったけど、エアコンはないし、かびくさいし、ワイファイも飛んでないし・・・駄目だあ。こりゃ。こんなとこに新入部員が来てくれるわけないよ。今年も部員ゼロだあ、廃部だあ・・・去年もなあ、見学にきてくれる子とかいたんだけどいつの間にか逃げられちゃって・・・悲しい」

       ひとしきり落ち込む七瀬だが、すぐ立ち直る。

七瀬  「ダメダメ。駄目だよ七瀬。弱気になっちゃダメ。弱気は最大の敵!こういう逆境でこそ、人間の真価が問われるの。漫画とかだと、こういう時に伝説のアイテムを見つけてレベルアップするとかよくあるし。何かないかな。急に演劇がうまくなるコツが書いてある古文書とか」

        七瀬、物置の中を物色する。すると厳重に封印された箱を見つける。

七瀬  「なにこれ?なんか、すごそう。開かないな?なんか貼ってある。邪魔だなあ」

        七瀬、封印を剥がして箱を開ける。しかし、中には何もない。

七瀬  「なんだ・・・空っぽか」

        七瀬、箱を放り投げる。
        その時、度からともなく聞こえる声。

悪霊  (声のみ)「はっはっは、はーっはっはっ!」
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