目安箱クリスマス
開幕。
【十月半ば・いつもの場所】
舞台上に水嶋、越智。

水嶋:(資料を読みながら、落ち込んだ様子で)中間テストの成績は、まあまあか……。

牧野:悪かったんですか?

水嶋:私は完璧!各学年の平均点を教えてもらったの。それと、各教科の成績上位者なんかも。参考用にね。

牧野:文化祭や音楽祭もありましたし、この成績なら、悪くないんじゃないですか?

水嶋:まあ、ね。このテストの結果で、勉強会の成果を確認したくて。

牧野:生徒会主催、生徒人気の高い教師を集めた、理想の勉強会。

水嶋:渡辺先生とか、つまらない先生の授業はもうウンザリ!(誇らしげに)生徒目線で先生を選ぶ……生徒会だからできる仕事ね!あとは、生徒同士で教え合って、苦手を補ったり、得意教科を強化したり。

越智:教える役を担う生徒を探すのに、成績上位者も確認してたんですね?

水嶋:そう!あの勉強会、教師や保護者からの評価も高いんだけど……。

牧野:ここのところ、目立った効果はありませんね。

水嶋:そうなの。目安箱で要望をもらったのが、一昨年の春だから……

牧野:取り組みが始まってから、もう三十四カ月ですね。

水嶋:二年半でいいじゃない、分かりにくいわね。

牧野:それでは不正確ですから。

水嶋:そんなに経ってたのかあ……。そりゃあ、停滞もするわよねえ。

牧野:平均点は、全体で一.五ポイント上がっています。

水嶋:細かいなあ……。これまでの伸び率で考えたら、十分停滞と言えるでしょう。

牧野:何か、カンフル剤になるものがあれば良いのですが。

水嶋にピンスポットC.I.

水嶋:(元気いっぱいに)こんにちは!皆さんご存じ、生徒会長の水嶋です。……ええ、知らない!?(わざとらしい咳払い)え~、ごほん。知らざあ言ってきかせやしょう。この生徒会、見ての通りの少数精鋭で、零細企業のように見えますが、ただの生徒会じゃないんです!私が入学したときは、普っ通~の生徒会だったのですが……(目安箱を手にし)この目安箱を設置し、生徒からの要望を叶えることで! 学校をより良く!学生生活を楽しく!大々的に改革することに成功したんです。勉強会を開いたり、学校設備を改善したり、文化祭や体育祭を大いに盛り上げたり!(思い出に浸り)苦しくも、楽しい日々でした。(オーバーな表現で、観客席に耳を向け)なになに?それは、普通の生徒会活動じゃないかって?(目安箱を元の位置に戻しながら、もどかしそうに)うーん、違うんですよー!目安箱を中心に、みんなの要望が集まって、期待が集まって、学校が一つになって……!(テンションを上げるも、観客との温度差に気付き)……これは、もう、その目で確認していただくしかありませんね!今日もまた、生徒会は、みんなの学生生活を豊かなものにするために活動しています。(観客席に目配せし)そこで、ちゃあんと、見ていてくださいね!(目安箱を叩き)私たちの物語は、いつもここから始まります。今日も、また……。

明転。

水嶋:(モノローグの前にいた位置、体勢に戻り)カンフル剤……特効薬……。そうだ!目安箱!

牧野:そうだ、目安箱。今日はまだ中を確認していませんね。

水嶋:私たちを助けてくれたのは、いつだってこれだったわ。言葉に乗せた、誰かの願い。

牧野:(目安箱を覗き)今日は二枚ありますね。

水嶋:(用紙を取り出し)まずは一通目!(居直って)「クリスマスパーティーをしたい」

牧野:クリスマスパーティー?

水嶋:ああ、今年のクリスマスイブは、終業式の日だから。

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