仮想戦記
「仮想戦記」 作 松川美左
キャスト
サトウ 狙撃兵。年上。
タナカ 通信兵。スズキよりは年上。
スズキ 衛生兵。年下。
アナウンサー 声のみ。男女問わないが、優しい声だと良い。
(出入り口は上手固定)
どこかの国の基地。基地といっても、元は雑居ビルだった。上階の一部屋を使って「基地」としている。
近くに海があるのか、小さく潮騒が聞こえている。
サトウは窓の近くに設置された望遠鏡をみている。(ほぼ常に客席を向いている状態)時折、銀色の小さな袋を口に運ぶ。(ゼリーのお菓子)
タナカはその後ろでパソコンに向かっているように見えるが、時折、不自然に動きが激しくなる。ゲームで遊んでいるらしい。パソコンの周りには、資料に隠されるように、携帯ゲーム機が置いてある。(隠せていない)
彼らは500メートル先にある、敵国のミサイル基地を監視している。
潮騒が聞こえるだけの時間が、しばらく過ぎていく。
慌ててタナカがスピーカーのスイッチを入れる。童謡調の歌が流れる。
♪
ゆけゆけ ゴーゴー
兵隊さん
平和のために どこまでも
炎も水も なんのその
僕らのヒーロー
すきすき 兵隊さん
♪
(みたいな歌詞)
アナウンサー 戦地の皆さん、お疲れ様です。定時放送のお時間です。
直近一ヶ月の統計で、傷病兵の数が昨年度より2%上昇しています。こ
れを受けて、臨時病院を含めた各小隊に、緊急医療品キットを配送する
ことが決まりました。基地ごとの配送タイミングはこの後、お伝えしま
す。お手元に届くまで、今しばらくお待ちください。
さて、戦闘が始まってから、今日で千日となりました。千日に渡り、戦
い抜き、我が国を守り抜いている戦闘員の皆さんに、心から感謝を申し
上げます。
このあとは自動音声にて、配給スケジュールをお届けします。
スズキ、箱を持ってやってくる。
タナカ 放送聞こえてた?
スズキ 聞こえましたよ。放送機器、復活したんですね。
タナカ よかったわ〜。定時放送だけは聴かないとやばいからな。
スズキ ほんと、どこに耳がついてるか分かりませんよね。
タナカ 配給ドローンに盗聴器ついてるらしいぜ。
スズキ え、マジっすか?
タナカ 俺らのサーバーじゃあ、もっぱらの噂だよ。
スズキ やっべ、さっき歌ってたの聞こえたかな。
タナカ 歌? 何歌ってたんだよ?
スズキ ちょっと……配給、嬉しかったから……
タナカ ん〜?
スズキ 別に大した歌じゃないですよ。はいきゅー♪はいきゅー♪(適当な節をつけ
て)みたいな。
タナカ かわいいー(笑)
スズキ 別にいいでしょ、三日に一回の配給なんだから、多少ははしゃぎますよ。ねえ、
サトウさん。
サトウ あ?
スズキ 配給きたらはしゃぎますよね?
サトウ うーん。
スズキ はしゃぎ……ますよね?
サトウ はしゃぐねぇ。
1/5
面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種
Windows
Macintosh
E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。