あなたは悪魔
「あなたは悪魔」

登場人物
豊   (ゆたか):インスタント製品の悪魔(女)
咲夜  (さくや):演劇サークルの演出担当の女子大生
楓   (かえで):演劇サークルのリーダー・役者
久本 (ひさもと):演劇サークルの役者の男子
啓太  (けいた):演劇サークルの裏方、他メンバーより1年後輩
祐美   (ゆみ):サークル無所属のセレブ大学生
白    (しろ):豊を探している悪魔

場面 1 咲夜の部屋
―咲夜と豊がいる
―豊はふんぞり返っていて、咲夜は正座させられている
―ちゃぶ台の上にはインスタントのやきそばの容器が開けられている
豊 「どうしてくれんだ?」
咲夜「は、はい…すみません」
豊 「すみませんじゃないだろ?どうしてくれんだってえの」
咲夜「そんな事言われても…やきそばだと思ったから…」
豊 「しらねえよそんなもん!大体お前な、おっこってたもんを食おうってのが間違ってんだよ、そうだろ?」
咲夜「あ、はい…今月ピンチだったのでつい…」
豊 「お前の事情なんて聞いてねえっつうの。てかさ、まあ食おうとしてたのは良いよ、でもお前作り方間
 違ってんじゃん?お前がそれ間違ってなかったら私もこんな不幸な事にはならなかったんだよ」
咲夜「だ、だってやきそばだと思ったから…ソースは後でかけるんだろうなって」
豊 「説明読めよ!全部入れるんだよ!」
咲夜「読めませんよこんな文字!何語ですか!?」
豊 「…まあ…人間には読めないかも…な」
咲夜「誰だってやきそばだと思いますよ…そしたら黒いのはソースだと思って一緒には入れませんよ…」
豊 「あ〜ったく、いいわけなんていい!だからどうしてくれんだ?」
咲夜「ど、どうしたらいいんですか!」
豊 「しらねえよ!」
咲夜「あうう〜〜〜…」(泣く)
豊 「…お…あ…な、泣くなよ、ごめん、悪かった言いすぎた」
咲夜「だって、だって、インスタントの悪魔なんてあるとは思わないから〜〜」
豊 「そ、そうだな、うん、ゴメン、ゴメン新発売でゴメン!」
咲夜「私こそごめんなさい〜作り方間違えてごめんなさい〜」
豊 「も、もう泣かないでよ〜、もうおこんないから!」
咲夜「ぐす…ぐす…ところでこの黒いのは結局なんなんですか?」
豊 「…悪意」
咲夜「…悪意のない悪魔?」
豊 「はい、そうです」
咲夜「…それは悪魔なんですかね?」
豊 「悪意のない悪魔はいけませんか?」
咲夜「いけないってわけじゃないんですけども…悪魔と呼ぶべきなのでしょうかね…」
豊 「う〜〜ん」
咲夜「だってホラ、悪意がないと悪いことってできないんじゃないですか?」
豊 「そうか?」
咲夜「えっとじゃあ…電車に乗っていて、自分は座席に座っていたとして、おばあさんが乗ってきたらどう
 します?」
豊 「席を譲る」
咲夜「そんな良い人の代表みたいな事してる人に『この悪魔!人でなし!』なんて言えないでしょう」
豊 「あ、まってまって今のなし…えっと、狸寝入りする…」
咲夜「そんなのは普通の人でもしますよ」
豊 「マジで!?ひどくない!?」
咲夜「ヒドイとは思いますけど、あなたは悪魔ですよね?」
豊 「え?え?じゃあなに?人間の言う悪魔だとどういう事しちゃうわけ!?」
咲夜「訳もなくおばあさんを蹴り倒したりするでしょうね」
豊 「この悪魔!人でなし!」
咲夜「…うん、だからあなたが悪魔なんでしょ!?」
豊 「あ、そうか」
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