MEISO TRIP
1.迷走電鉄 挫折経由 希望の光行き [普通]
■暗闇の中、「ガタンゴトン……」という電車の走る音が聞こえてくる。
■きしむ車体。おんぼろな電車は暗闇の中をひたすら走ってゆく……
■舞台中央に四人掛けの座席が浮かび上がる。窓際の座席に少年が、そしてその反対側の座席(通路側)においぼれた老人が座っている。なお、少年は爆睡。老人はのんびり新聞を読んでいる。
   
少年   ふぁっ? トマト20個で1380円? 破格!
   
■突然目を覚まし、慌てて起き上がる少年。老人、思わず手に持った新聞をその場に落とす。「ああ?」という表情で少年を見上げる。
   
老人   おめえ、頭、大丈夫か
   
■老人の言葉で、はと我に帰る少年。一瞬ここが何処だかわからない素振りをするが、徐々になんとなく、静かに今の状況を把握してゆく。
   
少年   夢、だったのか
老人   ……。
少年   おい、さっきから何ジロジロ見てんだよじじい
老人   トマトとは何ぞや
少年   あ?
老人   じゃから、トマトとは何ぞや、と聞いておる
少年   なんでじじいがそのこと知ってんだよ
老人   聞いたからじゃ
少年   どこで?
老人   ここでじゃ
少年   いつ?
老人   今ついさっきじゃ
少年   じじいてめえ、人の心の中にでも入れんのかよ
   
■老人爆笑。咳込んで死にかける。
   
老人   (呼吸荒いまま)やめろ、中二病はやめろ、きもすぎる
少年   てっめ! おいこらクソじじい! 慣れ慣れしく喋ってんじゃねえぞ、ゴラアア!(顔を真っ赤にして老人の胸ぐらを乱暴に掴む)
老人   おお怖い怖い。最近の若者は理不尽なことがあると直ぐ暴力じゃ
少年   じじい、てめえさっき俺のこと『きもすぎる』とか言ったな
老人   言っとらん
少年   ああ? 舐めてんのかじじい。言ったろ!
老人   言っとらん
少年   言った
老人   言っとらん
少年   言った
老人   (突然、裏声を出して女々しく)きゃー、私たち、まるで付き合いたてのカップルみたい!
   
■少年、ポケットからスリッパを取り出し、無言で、しかも無表情で老人の頭を思いっ切りはたく。
   
老人   何故スリッパ……
少年   あ? ああ、ごめんごめん。さっき居間に大っきなゴキブリがいてさ、もう気持ち悪いし、怖いし、うっとおしいから、トイレのスリッパで思い切り叩いて潰してやったのよ。ソレ
老人   (今度は老人が顔を真っ赤にして、少年の胸ぐらを乱暴に掴む)貴様――っ!
老人   ソレとは何じゃーっ!
少年   あ? だからトイレのスリッパだけど?
老人   違う――っ! ゴキブリを叩いて潰したトイレのスリッパで人様の頭を殴るとは何事じゃと聞いておるのじゃ!
少年   そこにハゲが……あったから?
老人   登山家の『そこに山があったから』みたいな感じで言うな! このクソったれが! あと誰がハゲじゃぶっ飛ばすぞ貴様っ!
少年   口悪っ。てか、
老人   あ?
少年   あれ? そういや俺……、さっきまでリビングでくつろいでたはずなんだけど……
老人   ……。
少年   ん?
老人   ん?
少年   そういやじじい、よくよく考えたらあんた誰だよ。死神か? 俺はまさかリビングで死んだのか? それともこれはまだ夢の中であって、現実世界じゃないとか? え、なに? どういうこと? ここどこよ?
老人   ふんっ!(少年の胸ぐらを乱暴に突き飛ばして)やっと気付きおったかこのクソったれめ
少年   気付いたってどういうことだよ。なに、その通りってか?
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