詐欺が愛しくて
   詐欺が愛しくて

登場人物

・タエ子………無職の女。27歳。
・男……………無職。オレオレ詐欺師。25歳。

・素子…………タエ子の母。
・考一…………タエ子の兄。
・優子…………タエ子の妹。

・加藤の母……加藤君のお母さん。


          どこにでもある普通の広さの家
          普通のリビング
          テーブルに本を置いて椅子に座ってタエ子が読書に耽っている
          何冊かもう読み終わったようだ
          静かに時が過ぎる
          だが、突如電話が鳴る
          家にはタエ子以外に誰もいない
          明らかに仕方がない、という素振りでタエ子が出る

タエ子   もしもし。

          別の場所に考一が現れる

考一    もしもし、オレオレ。おばあちゃん。オレ。
タエ子   私は27歳です。孫はおりません。

          タエ子が電話を切る
          また再び電話が鳴る

優子    もしもし、オレだけど。オレだよぉ。おばあちゃん、オレだよ?
タエ子   おばあちゃんは失礼ですよ、27歳に向かって。

          タエ子が電話を切る
          また再び電話が鳴る

素子    もしもし、オレだよ、オレ。会社の小切手なくしちゃってさぁ、助けてよ。
タエ子   上司に正直に話して謝れば良いと思います。

          タエ子が電話を切る
          再び電話が鳴る

加藤の母  もしもしぃ?オレだけど。おばあちゃん、助けてよ。おばあちゃんしか頼れる人
      がいないんだよぉ。
タエ子   孫もいなければ、結婚もしていないし、彼氏もいません。27歳なんで。

          タエ子が電話を切る
          再び電話が鳴る

タエ子   また電話…。

          タエ子が電話に出る

考一    もしもし、オレ。
優子    オレだよ。
素子    オレオレ。
加藤の母  オレだけど。
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