loveletter街の灯り
一通の手紙から始まる恋の物語
○オープニング何年か先の札幌

札幌、亡き日下(旧姓中尾)純(女)の家、夜
奥は木のぬくもりのある壁
舞台中央にレトロなテーブル。
上手奥にこちら向きに長椅子があり、日下老人が亡き純の遺影写真を見て座っている。
テーブル上のランプの灯り。
純(女)の孫娘未来が上手から入る。
手にスマホを持ち、必死で操作している。脇に木箱と日記帳らしいものを抱えている。
部屋の中の家具を、飛び乗ったり、飛び降りたりして部屋の中を歩き回りながらの操作。
その姿を呆れ顔で見る老人。

未来「facebookのいいねチェックも大変だな。かれこれ三時間だよ。全く、友達付き合いも楽じゃないよ。・・・おっと、LINEにトークが入ったよ。え?今から遊びに行こうってか、無理無理・・・・『無理ですよスタンプ』っと・・・・これこれ。」
日下老人「未来。」
未来「・・・ぁ、メール入った。また援助交際しませんかって・・・迷惑メールもキリがないね。モテル女は辛いね。」
日下老人「未来・・・・。」

スマホに着信が入る。

未来「はい・・・りっちゃん?また彼氏と別れたって。今年入って何人目?・・・でも、もてるねぇ。」
日下老人「未来!」

未来、日下老人に気が付きスマホを切る。

未来「ァ、おじいちゃん。」
日下老人「全く落ち着かないね、未来は・・・。」
未来「ごめんごめん、おばあちゃんのお葬式終わったばっかりなのにね。」

未来、木箱と日記帳を持ってテーブルに座る。

未来「あのねおじいちゃん、おばあちゃんの化粧台整理していたら、こんなのが出てきた。」
日下老人「純の?」
未来「ネックレスみたいなのが入ってる。それと、日記帳かな。」

未来はテーブルに座り、木箱の中のネックレスを出す。

未来「おじいちゃんのプレゼント?」
日下老人「いや、それはわしがあげたものじゃないよ。」
未来「じゃあ、元カレとか?おばあちゃん、モテたんだね。」
日下老人「そりゃ、おばあちゃんは綺麗だったからね。」
未来「おじいちゃん、今さらのろけないでよ。」
日下老人「未来も、おばあちゃんに似て綺麗だよ。」
未来「まあね。・・・・それにこれ、日記帳だ。読んでもいいかな。」
日下老人「日記帳なら、お墓に一緒に入れてあげればよかったな。」
未来「そうだね。」
日下老人「読んでみたいかね。」
未来「・・・・・・少し。」
日下老人「そうか・・・その日記の内容は、だいたいわしにはわかっているんだよ。」
未来「本当?」
日下老人「わしとおばあちゃんが出会った偶然は知っているかね。」
未来「お母さんに少しだけ聞いたことがあるけど。」
日下老人「人の縁、運命の出会いというのは不思議なものだよ。向こうで話してあげよう。今からもうずいぶん前のような気がするが、まだ携帯もデジカメも、メールもなかった頃の話じゃ。」

未来は、先に上手に消える。
老人は、日記帳と木箱を持ち、ゆっくり、上手に消える。暗転

○第一景 奄美大島 1995年 彩子の場合

明転
奄美大島彩子の家、昼過ぎ、明るい日差し、波の音
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