ざ・えっくすでぃ
『ざ・えっくすでい』

◆キャスト(男3)
国原浩一
笠木
憲兵


    1944年12月24日、第二次世界大戦戦時下の福島市
    外国人抑留所「ノートルダム修道院」の塀の向こう側。
    この福島抑留所は、1942年7月から十一カ国、
    0歳から60代までの外国人が抑留されていた施設である。
    1944年3月、国際赤十字が視察に来るまで、
    近隣の住民まで存在を知らされていなかった。

    近くに住む笠木と国原浩一が、何やら相談をしている。
    笠木が新聞を広げて


笠木 「(新聞を読みながら)今宵クリスマス。市内の催し様々。ホリネス教会で弊害ありと認めて今年も廃止」
浩一 「弊害?」
笠木 「待て待て。(再び新聞を見ながら)少年少女達の小さな夢へ、華やかな影を投げていた楽しいクリスマスは、いよいよ今宵市内の各教会を訪れる」
浩一 「クリスマスってのは、お祭りのようなもんなんだろ?」
笠木 「ああ、このときの教会での催しは、賛美歌、舞、歌劇、聖書暗誦、演説、英語演説・・・」
浩一 「英語はまずいよ、このご時世。その新聞いつの?」
笠木 「大正9年、24年前だ。舞はどうだい? えっと、『主(あるじ)の若武者』ってのを踊ったって書いている」
浩一 「若武者の舞ね。入れられそう」
笠木 「三太九郎は?」
浩一 「それも入れたほうが良いんじゃない?」
笠木 「そうだな」
浩一 「もう一度流れ確認しよう。最初に挨拶をして、出し物、で、三太九郎が出てきてプレゼント」
笠木 「出し物が舞だけでは寂しくないか?」
浩一 「あー、じゃあ、これだ!福島組合教会『四十七士のお話』」
笠木 「四十七士?」
浩一 「赤穂浪士? クリスト教国の祭りなのに赤穂浪士?」
笠木 「まぁ少なくとも教会でやっているのだから、問題ないだろ」
浩一 「・・・僕らが生まれる前なら、もっとクリスマスを知ってる人もいたんだろうけどね」
笠木 「とてつもなく楽しいモノってのは確かなんだよ」
浩一 「笠木の叔父さんの話、どこまで本当なのか」
笠木 「東京の銀座じゃ、クリスマスになると、綺羅びやかな電飾がつくんだそうだ。ケーキも食う。そして、夜明けまで踊り狂う」
浩一 「この新聞には踊り狂うってことは書いてないぞ」
笠木 「そんなん新聞が書くわけ無いだろ」
浩一 「踊り狂ったほうが良いのかな」
笠木 「さすがにそこまでやっちゃうとな」


        そこに憲兵がやってきて


憲兵 「お前たち!なにをこんなところでウロウロしている!」
笠木 「はっ!」
憲兵 「何をしている!」
笠木 「塀の向こうの敵国の奴らをどのように討ち果たすか、知恵を出し合っていました!」
憲兵 「本当か」
笠木 「はいっ!」
憲兵 「この向こうには敵国の人間が捕虜として捕まっている!」
笠木 「知っております!」
憲兵 「しかし、あくまで『民間人』だ。危害を加えることは許されない」
笠木 「なぜでありますか!」
憲兵 「お前たちだな」
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