蛇の号哭


  瀧(たき)
  藤子(ふじこ)
  杉本(すぎもと)

  男(おとこ)


  舞台上は外と中を兼用とする、室内にもなればとある河川敷にもなる。
  中央に無機質なローテーブルがひとつあるのみ、外ではただの段として使用する。


■■■

  0

  劇場に小さく流れ続ける都会の喧噪、照明がゆっくり落ちていく中、喧噪は段々と大きくなり。
  暗転。
  数秒後、鍵を開ける音、続いて扉の開く音と同時に喧噪は消える。
  暗闇の中、買い物袋を下げて部屋へとあがる男。
  パチリという音とともに明転。
  男、疲れた様子で買い物袋を机の上に置き、上着を脱ぎ捨てる。
  無言で袋から弁当と缶ビールを取り出す。
  机の上のリモコンを取りテレビをつける、響くバラエティ番組の音。
  缶ビールを開け、喉を潤わすと、弁当を開き無言のままもそもそと食事を始める。
  テレビには目を向けない、まるで音を流すことで沈黙を避けているかのように。
  途中、箸を止め何かを思い詰めたような表情を見せるが、再び無言で食事を始める。
  テレビの音が響く中、溶暗。


■■■

  1

  明転、同時にテレビの音は消える。
  そこはとある河川敷の高架下、舞台上には二人の浮浪者と、空き缶が詰まったごみ袋。
  瀧、ビールの空き缶を頭上に掲げたままじっとそれを眺めている。
  それに対し、背を向けたまま足下を探る藤子。

藤子  確かにしたんだよ、感触。

  瀧、それには反応せずじっと空き缶を眺めている。

藤子  お金の。踏んだ、足の裏にじりっと。感触。音もしたね、砂と小銭がすれる音、じゃりって。ありゃ五百円玉だよ、じゃりっていったからね。じゃりっていったらそりゃ五百円玉さ。じゃり、…じょり? …じゅるり?
瀧   ……。
藤子  本当だよ、あたしはね、音と感触でどの小銭かわかるんだ。靴履いてたってすぐわかる。五円玉も十円玉も十五円玉も、あたしにかかれば赤子の手をひねるようなもんさ。まぁひねったことないからどんなもんかは知らないけどね、それくらい簡単だってことさ。赤子の手を捻るだなんてそれこそ悪魔の所行だよ! あたしはこんなホームレスでろくでなしだけど魂を売っちゃいないからね、神様はいつだって高いところから見ていらっしゃる。地道にコツコツ努力をすれば(見つける)ほらっ! やっぱり百円玉だ! あたしの勘に間違いはないね。

  瀧、空き缶をひっくり返して眺める。

藤子  しっかし金は天下の回りものって言うけど、こういうのもそうなるのかね。それにしちゃどうにもせこい感じがしてしょうがない。もっとぱーっと大金とか拾えるってんならいいけどね。ほら、この間拾った宝くじももうひとつふたつ数字がずれてりゃ大当たりだったのに。知ってるかい、宝くじをお湯で煎じて飲むと脳の大きさが…、なにやってんだい?
瀧   …横?

  瀧、ビール缶を横に倒し再び眺める。
  藤子、近寄り一緒にビールの缶を見る。

藤子  落書き?
瀧   …うわぁ。
藤子  なんだいその反応、レディの顔を見て、失礼な男だねぇ。
瀧   れでい?
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