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窓

瀬戸山光子作　「窓」

〇登場人物
窓　　　校舎の窓。影マイクで声のみ。黒子兼任。
桜　　　高校生。ちょっと天然な感じ。
美雪　　　桜の友達。しっかり者。
千秋　　　桜の友達。ちょっときつい感じ。
夏美　　　桜の友達。体育系。
田中先生　　新任の先生。女性。
窓の似合う女　場転のたびに花道の豪華な窓に登場する変な人。
うるさい観客　窓の似合う女が登場する場所に近い観客席に座り私語をする。

〇舞台配置
舞台手前ベタに窓のパネルが４つ並ぶ。窓の裏には机と椅子が１セットずつ置かれている。それぞれのパネルの間に光が漏れるようになった柱状のオブジェ、中にLEDパーライトを入れて季節により色を変える。

１場　入学
　　　　BGM「いつだって僕らは」
　　　　オブジェ、ピンク色の照明。
　　　　桜リュックを背負い上手から歩いてくる。手にはクラス分けの紙を持っている。
心配そうな顔で紙を見て、何かを見つけ表情がほころぶ。紙をたたんで下手側へ。下手袖から出てきて、教室の戸を開ける仕草。中央のパネルのところに歩いていく。机にリュックをかけ、窓の外を見る。BGM小さくなる。

桜　　　４月。あれほど泣いた中学の卒業式がもう遠い昔のよう。あの時ほころびかけていた桜のつぼみが、今は花吹雪になって舞い落ちる。ついこの間のことなのに、もう「あの頃は」なんて偉そうに振り返る自分がいて、ちょっと大きい新しい制服の袖に腕を通せば、少し大人になった気分。初めてくぐる教室の扉を抜けると、窓の外に広がるはじめての景色。

　　　　BGMフェードアウト。
　　　　美雪が部屋に入ってくる。下手窓の前。

美雪　　　桜おはよう。
桜　　　美雪〜、待ってたよ。同じ中学の子がクラスにいたらいいなって思ってたんだけど、まさか美雪が一緒とはね。高校でもよろしくね。
美雪　　　はいはい。高校ではあんまり世話やかせないでよ。
桜　　　はーい。あ、ねえほら。窓の外見てよ。桜がすごくきれいだよ！
美雪　　　相変わらず窓の外ばっかり見てるんだから。
桜　　　美雪も見てみなよ。
美雪　　　ホントだ。きれいだね。夏は毛虫が多そうだなあ。
桜　　　もー。

　　　　夏美が教室に入ってくる。上手側の席に荷物を置く。

夏美　　　おはよー。
美雪　　　おはよう。
桜　　　お・・・おはよう・・・ございます。
美雪　　　桜、どうしたの？
桜　　　私、初対面の子と話すの苦手なんだ・・・。
美雪　　　もう、何言ってるの。大丈夫、自己紹介終わればみんな知り合いだよ。
桜　　　自己紹介？
美雪　　　うん。今日入学式なんだから、自己紹介あるでしょ。
桜　　　そっか！しまった！どうしよう！何も考えてきてない！
美雪　　　普通に名前とか、中学とか、趣味とかでいいでしょ。
桜　　　でもでも、高校生活の第一歩なんだよ！噛みまくったりしたらどうしよう！
美雪　　　大丈夫だって。
桜　　　美雪覚えてないの！？私の中１の時の自己紹介！
美雪　　　なにかあったっけ？

　　　　桜に単サス。

桜　　　緑ヶ丘小学校から来ました山下桜です。えっと、えっと、去年は小学校６年生でした。（男子の声「当たり前だろー」）。えっと、あの、ですよね、アハハ・・・。

　　　　照明元に戻る。

桜　　　ね！
美雪　　　あー、あったあった。あれ面白かったよ。

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