野球部君と演劇部さん
「野球部君と演劇部さん」

遠藤・・・高校2年生。演劇部。
片瀬・・・高校1年生。野球部。



  劇中劇。雨の音。遠藤板付き。

遠藤 すべての出来事は私の話で、すべての出来事は他人事。あの日私があなたに会ったのは偶然で、あなたに私が会ったのは必然。

   傘をさした片瀬が出てくる。(ジャージ)

遠藤 濡れているのは私。濡らしているのは雨。濡れているのは傘を差しだすあなた。濡らしているのは瞳。

   片瀬、さしている傘を遠藤にさし出す。(ずっとさしだしたまま)

遠藤 冷たい温かさが包んだ温かく冷たい言葉。
片瀬 ・・・・・・・・・・・・。
遠藤 言葉に意味などなく、言葉を放つ刹那あなたの口から零れる希望と絶望。
片瀬 (首をかしげ薄く笑う)

   片瀬、傘を持っているのが段々辛くなる。傘を下げまいと頑張るが体が揺れたりじっとしていられなくなる。

遠藤 あなたの声を聴かせて。
片瀬 重い。
遠藤 え?
片瀬 肩が。あー

  片瀬、傘を下してしまう。

遠藤 片瀬~
片瀬 すみません。
遠藤 もー。
片瀬 意外と重たいんですって。
遠藤 だらしないなー。それじゃあ(どのシーンやろうかな)

   遠藤、台本を捲る。

片瀬 練習戻ってもいいですか?
遠藤 ダメに決まってるでしょ。
片瀬 バッティングの途中だったんですけど。
遠藤 野球部でもあるまいし!
片瀬 野球部ですよ!
遠藤 見えない。どう見ても生物部。もしくは天文部。
片瀬 うちに天文部はありません。遠藤先輩が「ちょっとだけ」って言うから。
遠藤 そんな練習して飽きない?
片瀬 いいんです。好きなんですから。(外に出ようとする)
遠藤 雨降ってきたよ。
片瀬 ・・・・・・・。
遠藤 ね。一人だと練習になんないのよ。だからもうちょっと付き合ってよ。
片瀬 もう少しだけなら。
遠藤 (やった)じゃあ今度はこっちの(台本)
片瀬 (受け取る)
遠藤 よーいはい。

   劇中劇。

遠藤 怖い。なんて高い崖なの。ねえあの森の向こうには何があるの?
片瀬 あの森の向こうには黄泉平坂(よもつひらさか)があるのさ。
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