ウソになる
ウソになる
相馬杜宇(あいばもりたか)

【あらすじ】
 ある高校の演劇部の生徒達が次回の大会に向けて脚本会議を開いている。OBの少し年上の人(杖をついている)も同席している。オリジナル脚本を書くという意見もあったが、生徒達は様々な事情から誰も手をあげない。既成脚本は講師に評判が悪いんだよなと生徒は口にするが、年上の人はそんなことはなく、既成脚本でも素晴らしい上演を沢山観てきたという。聞いてみると年上の人はかつて大会の審査に関わったことがあるという。生徒達は審査基準を根掘り葉掘り聞こうとするが、年上の人はあえて答えず自分の言葉で考えさせるようにヒントを出す。生徒達は自らの言葉で演劇の意味、例えば「面白い演劇とは?」「つまらない演劇とは?」を考える。既成脚本にもチャレンジするがどれもしっくりこず、年上の人(後に兄さんと呼ぶようになる)と脚本を書くことを提案。生徒達はウソっぽい芝居は好きではないため、男子でも女子でも通用する言葉づかいで台本を仕上げると約束する。台本の設定は都立の演劇部に岩手県の演劇部員が編入してくる話。盛岡冷麺を食べながら都立と岩手の意外なズレを知る。知ったところでこの台本はストップ。兄さんは人任せではなく、生徒達の言葉でストーリーを考えて欲しいと提案し……

【登場人物】
生徒1
生徒2
生徒3
生徒4
兄さん(年上の人)


―1―

※生徒の性別は一切問わない。男性、女性、どの役を演じても構わない。

ある部室。生徒1234と杖をついた人(左足に下肢装具、左手はだらんと垂れ下がり日常生活の役に立っていない)がやってくる。杖をついた人は少し年上に見える。
一同マスクをつけている。

生徒1 どうします?
年上の人 座れる方が。
生徒2 椅子?
生徒1 ある?
生徒4 こっちに。

生徒3、年上の人に椅子を用意し座らせる。

年上の人 ありがとう。(座る)
生徒2 どうする? マスク。
生徒3 しといた方がいいんじゃない?
生徒4 しといた方がいいよ。一応。
生徒2 でもさみしくない? 顔が見えないって。
生徒4 もう慣れっこだし。
生徒3 しょうがなくない?
生徒1 気が遠くなる。 
生徒2 いつになるんだろう?

生徒124、ちょっとしんみりする。

年上の人 始めようか。
生徒1 始める?
年上の人 脚本会議。
生徒1 ああ、そっちか。
生徒3 そっちって。死活問題だし。
生徒2 決めちゃったし。大会突破って。
年上の人 書くの? 脚本。
生徒2 書ける人ー?

シーンとなる。

生徒3 はあ?
生徒1 いやお互い様やし。そっちはどうなん?
生徒3 (書けない理由を言う)。
生徒4 (生徒1に)ダメ? 私は(書けない理由を言う)だけど。
生徒1 自分も(書けない理由を言う)。
生徒2 (しみじみと)やむを得ませんなぁ。
生徒134 いやいやいや。
生徒4 理由を聞きたいの、理由を。
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