3人集まればなんちゃら
樋口 遙香 高校2年生。成績は優秀で生徒や先生からの人望も厚い模範生徒。運動は少し苦手だが、体育の予習をこっそりしているため、誰にもバレずにすんでいる。
 
 山本 莉々 高校2年生。口数が多い。勉強は嫌いだけれど親がうるさいので仕方なく勉強している。
 
 相澤 こころ 高校2年生。おっとりした口調だが1番の不真面目。
 
 長岡  27歳の現代文教師。生徒になめられているのが悩み。
 
 鬼山 生徒指導担当の体育教師。
 
 
 
 緞帳上がるが舞台は暗転中。一通のメッセージ音。
 声のみ。
 遙香「こんな遅い時間に連絡してごめんね。けど、今日中にどうしても連絡したくて。…私、2人に伝えたいことがあるの。本当は直接あって伝えるべきだと思うんだけど、勇気が出なくて。…その、私ね…」
 2人「真面目を…やめる?」
 舞台明転。
 莉々「ねぇねぇ、見た?遙香からのLINE」
 こころ「あぁ、グループに来てたやつでしょ?見た見た〜」
 莉々「あれってどういう意味なのかな?真面目をやめるって」
 こころ「分かんな〜い。意味も分からないしなんて返せばいいのか分からなくて既読しかつけてないんだよね」
 莉々「私も。でもさ、まだ遙香学校来てないし」
 こころ「いつもならとっくの昔に来ててせっせと勉強してるはずなのに」
 莉々「だよね。(手元の時計を見て)うわ、もしかして、遅刻してくるのが真面目をやめるってこと?」
 こころ「そういう事?なーんだ、つまんないの」
 莉々「つまんなくは無いでしょ」
 こころ「もっとさー、派手に不真面目になるのかと思って。ピアス開けたりとか、お酒飲んだりとか、タバコ吸ったりとか。あの遙香がそんなことするわけないけど」
 莉々「まぁそうだよね。成績はいつも学年トップだし、先生達やクラスメートからの人望もあるし、次期生徒会長最有力候補だし。そんな遥がピアス開けてお酒飲んでタバコ吸ってとか…」
 2人「まさかね〜!」
 2人、笑う。
 その時、下手から「待ってくださーい!」という先生(長岡)の声が聞こえる。
 莉々「ん?先生の声だ」
 こころ「どうしたんだろう」 
 遙香と長岡、下手から走ってやってくる。
 遙香、スカートを短く折っている。(出来れば薄化粧、髪の毛のウェーブも)遙香はスンとしているが、相対的に長岡は肩で息をしている。
 莉々、こころ「は、遙香!?!?」
 莉々「ちょっとあんたどうしたのその格好!?メガネを外したのはいいとして…化粧してるし!」
 こころ「スカートもこんなに短い……(匂いを嗅ぐ)香水もつけてるじゃん!えこれミスディオール?」
 莉々「ちょっと!そんなのどうでもいいから!どうしたの急にこんな格好!」
 遙香「…………」
 長岡「………はぁ………はぁ………樋口さん…!お願いですから…!お話を…!聞せてください…!」
 遙香「だから…誰にも何にも話すことなんてない」
 りり「遥が、先生にタメ口を…!?」
 長岡「はぁ…!(息を吸う音)」
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 長岡「ととととととにかく!樋口さん、何があったのかは知りませんが、今のその格好で授業を受けることは認められま…」
 遙香「…わかった。帰る」
 長岡「…へ?」
 莉々「ちょっと遥、どうしたの?仮に先生には話せなくても私やこころには話してもいいじゃん!」
 こころ「そうだよ、昨日から変だよ!急に真面目やめるとか言ってそんな格好で学校に来るなんて……」
 遙香「…真面目を辞めるって、昨日言ったよね。…なんか変って、今までの私が変だっただけだよ。これが私。これが…私。昨日までの『樋口遙香』はもう居ない」
 莉々「…何それ、訳わかんないよ。もっとわかりやすい言葉で伝えてよ。いつもみたいに」
 こころ「そうだよ!ちゃんと私たちに分かるように話してよ!ね、私たちずっと3人だったじゃん。3人で一緒で、性格はみんなバラバラだったけど楽しくずっとやってきたじゃん!」
 遙香「…ウザ」
 2人「……え?」
 遙香「…そういうの、もうウザイって。いいじゃん別に、私は私なんだから。それとも、2人は真面目でいい子ちゃんの私が好きだったの?真面目でいい子ちゃんじゃなくなった私は、あんたら2人の面倒見る役じゃなくなった私は、もう必要ない?」
 2人「…」
 遙香「……そういう事だよ。バイバイ」
 遙香、下手にはける。
 莉々「……待って!」
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