晴れときどき、おかえり
晴れときどき、おかえり


杉山 太一

杉山 すず

静香


太一「近所の公園…まぁ、私が生まれた頃には既にあったので、随分と昔からあるのですが、実家から歩いて2分程の所にその公園があったのです。福島県福島市、渡利…。原発事故のホットスポットになったことで不名誉ながら、それで名前を聞いたことがある人がいらっしゃるかもしれません。

近くには阿武隈川が流れ、その上に松嶺橋(しょうれいばし)と大仏橋(おさらぎばし)という並びの橋があります。県庁側からそれらの橋を渡ると、その辺が渡利です。その渡利には、七社宮(しちしゃのみや)という地区があります。その公園はその辺にあったので「七社宮公園」と呼ばれていました。県立南高校の近くで、国道4号線を走ってるとその辺を通ります。正確には115号線の事なのですが…まぁ、みんな4号線だと思ってます(笑)。

特に変哲もない公園でしたが、中々に気持ちのいい場所でした。ローラーのついた滑り台。綱で編まれた橋。タイヤがチェーンでぶら下がっただけの乗り物。砂場。赤ん坊でも乗れる、籠のような形状のブランコ。私が小さい頃は、そこで友達と朝から晩まで遊んでおりました。

私は大学で地元を離れてそのままいわき市で就職したのですが、実家に帰った時に、娘を遊ばせる為にその公園に足を運んでいました。帰省時に遊ぶめぼしいところはそこしかありませんでしたので、よく連れて行きました。子供の時に遊んでいた場所で、自分の子供を遊ばせるというのは、何となく不思議な気分になるものです…。娘も、その公園が好きで、よく連れていかれました。

とはいえ、そんな親子の交流も、せいぜい小学校低学年まででした。娘は既に中学二年生。(すず出てくる)公園で1日中滑り台を滑る歳でもありません。大人だけで行く用事も特に無かったので、ここ数年は行ってなかったのです。そんなある日。」

すず「ねぇお父さん、七社宮公園行こうよ」

太一「えっ、どうしたの突然」

すず「なんか最近行ってないなと思って。」

太一「いや、すず中学生だし、興味ないかなって思って。」

すず「たまにはいいかなって思って。」

太一「珍しい事もあるものだな、と思いました。その日は私の母が亡くなって一年になる頃であったので、一周忌の準備で帰省していたのです。私はここ数年、娘とちゃんと話していなかったので、ドギマギしながら散歩に出かけました。」

すず「ちゃんとマスクつけなよ」

太一「さんきゅ」

 二人、マスク付ける

太一「単なる気まぐれなのか…それとも今、これ(マスク)なので、街中に行く気にならないのか…単なる暇つぶしか…わかりませんが。」

 二人、歩く。音楽。

すず「うわー、懐かしい」

太一「ホントだな」

すず「あれ?滑り台ローラーじゃなくなってる。なんか短っ」

太一「あー、前に来た時壊れてたから、新しくしたんじゃん?」

すず「そっか」

太一「滑らないの」

すず「滑んないよ(笑)」

太一「あ、そう。」

すず「飲み物ちょうだい」

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