ハートの名探偵
「ハートの名探偵」




登場人物
・ミツハ
・死神












   暗転中。
   SE心臓の音。段々弱っていく。
   明かりがつく。
   生と死の狭間の世界。
   ミツハが倒れている。

ミツハ「う……(周囲を見回して)ここはどこだ?」

   どこからともなく死神が現れる。

死神「ここは生と死の狭間の世界だよ」
ミツハ「生と死の、狭間?」
死神「まったく。ようやく目が覚めたのかい? 相変わらず君はのんきだねえ」
ミツハ「……」
死神「ミツハ君。いやみっちゃんというべきかな。いやはやなんともこそばゆいね」
ミツハ「気持ち悪いなあ。ていうか、あんた誰?」
死神「私は……そうだね。私は、言うなれば君が生きるか死ぬかを決める存在、といったところかな」
ミツハ「なんかかっこつけちゃってるけど、要は死神的な存在ってこと?」
死神「私は別にかっこつけてなんかいないけどね。ま、そんなようなものかな」
ミツハ「私、死んだの?」
死神「まだ死んではいないよ。現実世界の君は生死の境をさ迷っている」
ミツハ「……」
死神「覚えているかい? 君は歩道橋の階段から転落したんだよ」
ミツハ「覚えてるよ。突然頭に衝撃がきて、そのまま階段を転がり落ちた」
死神「そうそう。見事に上から下まで転がったね」
ミツハ「なんかあんた嬉しそうだね」
死神「そんなわけないだろう。それは被害妄想というものだよ」
ミツハ「……まあいいや。じゃ、さっさと連れてってよ」
死神「え?」
ミツハ「だから、さっさと連れてってよ」
死神「待て待て待て。分かってるのかい? そうなったら君は死んでしまうんだよ」
ミツハ「別にいいよ」
死神「ほ、本当にいいのかい?」
ミツハ「いいよ。どうせ私なんか生きていても大して役に立たないだろうし」
死神「どんなに役立たずでも生きる権利はあると思うよ」
ミツハ「誰が役立たずだ」
死神「自分で言ったんじゃないか」
ミツハ「人に言われるとむかつくんだよ」
死神「我儘だなあ」
ミツハ「悪かったね。とにかくもうどうでもいいから早く連れてってよ」
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