楽死
「楽死（たのし）」
登場人物
田島
ジョーンズ
明かりが点くと、そこは１ＤＫのマンションの一室。
上手に玄関、部屋には家具などはなく、真ん中に二つの椅子が並べてある。
椅子に座っている田島、ボーと前を見つめている。
コツコツと階段を昇る音が不気味に鳴る。
歩く音止み、上手の玄関の前にジョーンズが現われる。
レインコートをまとい、大きなボストンバックを肩から下げているジョーンズ。
チャイムを押す。
立ち上がる田嶋、上手の玄関に向かう。
田島 （玄関から）死ぬことは希望ですか？ 絶望ですか？
ジョーンズ 希望。
田島 どうぞ。
田嶋、玄関のドアを開ける。
土砂降りの雨の音。
田島 初めまして田島です。
ジョーンズ 初めましてジョーンズです。
田島 今日は絶好の死に日和ですね。
雨の音強くなる。
ジョーンズ 確かに。
田島 さぁ、どうぞ中へ。
ジョーンズ では失礼して。
靴とレインコートを脱ぎ、部屋にあがるジョーンズ。
ジョーンズ、辺りを見回して、
ジョーンズ 本当に何もないのですね。
田島 ええ、あるのは二つの椅子だけです。家具もなければ、お洒落なアンティークもない。
ジョーンズ なるほど。チャットでお話したとおりですね。
田島 さぁさぁ、座ってください。
ジョーンズ では、失礼して。
椅子に座る田島とジョーンズ。
間
田島 そう言えば、ここからは何も決めていませんでしたね。
ジョーンズ はい、どうやって死ぬのか？ 時間は？ 道具は？
田島 どうしましょうか？
ジョーンズ ……そうですね。
間
ジョーンズ あの。
田島 なんです？
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