なやみのかたまり
『なやみのかたまり』


一人芝居。一人で二役。

 舞台上には男がたった一人。

悩んでいる男1。

一人で椅子に座っている。

傍らに男2が立つ。


男2 どうしたんですか?
男1 うーん。
男2 何か、悩み事ですか?
男1 ・・・どうして人は悩むのだろう。
男2 また哲学的な悩みですね。
男1 なーんで悩むんだろ。悩まなきゃいいのに。
男2 悩まない人間なんていませんよ。
男1 例えばさあ、仕事の悩みってあるじゃん。
男2 ええ。
男1 上司に怒られてへこんだりとかさ、仕事がうまくいかなくて頭かかえたり。
男2 はい、ありますね。
男1 なんで悩むかなあ。だってさ、怒られても、気にしなきゃいいじゃん。
男2 うーん。
男1 仕事うまくいかないならさ、うまくいけばいいじゃん。
男2 うーん。
男1 ね。
男2 うーん。
男1 忙しそうだね。
男2 あなたもね。
   あのですね、お言葉ですけど、大概の皆さんはあなたのように能天気にも楽観的にもできてはいないと思いますよ。
男1 君、いま僕をバカにしたな。
男2 まあ若干。・・・そんなこの世の物とは思えないような表情をしないで下さい。
   あのですね、簡単に言いますけど、誰かに叱られてへこまない人はいませんよ。仕事だって、どうすれば上手く行くのかがわからないから悩むわけでしょ。
男1 君は難しく考え過ぎなんだよ。
   例えばさ、目の前に石ころがあって、邪魔だなあ、前に進めないなあって思うとするじゃん。だったらさ、どかせよ、小石を。
男2 え・・・?ちょっと待って下さい、じゃあもしも小石がめちゃくちゃ重くて、持ち上がらなかったらどうするんですか。
男1 持ち上がるよ!だって小石だよ!
男2 え・・・ じゃあですよ、小石じゃなくてめちゃくちゃ大きくて高い岩とか壁とかがあったらどうするんですか。
男1 登ればいいじゃん。
男2 登れなかったら?
男1 壊せばいいじゃん。
男2 壊せなかったら?
男1 他の道を探す。
男2 うーん・・・
たいていはそれができないから悩んでいるんですけどね。
男1 ところでさ、君は誰なの?
男2 私ですか? 私は、あなたですよ。
男1 ん?
男2 ですから、私は、あなたなんですよ。
男1 何を言っているんだ。僕はここにいて、君はそこにいるじゃないか。君が僕であるはずがない。それにね、君が僕だっていうのなら、君はそんなに難しく考えないはずだ。だって、僕には悩みなんてないんだから。
男2 ほう、悩みがない。それはとても幸せで、それでいて非常に不幸なコトですね。
男1 まったく、君は難しく考え過ぎなんだよ。悩みが無い方が幸せに決まっているじゃあないか。
考え過ぎなんだよ。君はね、空が落ちて来ないかって心配で夜も眠れないって言っているんだよ?
男2 ・・・・・・いや、言ってませんよ?
男1 例えばさ、恋の悩みってあるじゃん。
男2 ええ、ありますね。
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