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赤マントにご用心

赤マントにご用心

　　　　　赤マント　―　最近めっきり噂を聞かなくなった怪人赤マント
　　　　　伊藤桃子　―　大学生の女の子。小学生の頃赤マントに脅かされた。
　　　　　怖い人Ａ　―　桃子を連れさらう怖い人
　　　　　怖い人Ｂ　―　怖い人Ａの付き添い
　　　　　不審者　　―　最後に登場する不審者。怖い人Ｂと二役可能
　　　　　警察　　　―　交番のお巡りさん。赤マントと二役可能
　　　　　天の声　　―　都市伝説の神様。声のみ。録音可

　　第１場（独白）

　　　　　　　上手スポットカットイン
　　　　　　　桃子が立っている

桃子　　皆さんは、怪人赤マントをご存じですか？昭和の初めごろ、日本中の小学生を震え上がらせた恐怖の怪人です。日が沈み始めた夕暮れ時、子供が一人で帰り道を歩いていると後ろから怪しい笑い声が聞こえる。すぐさま振り返っても、そこには誰もいない。何だろう、気味が悪いな。そう思っていると背中からこんな声が聞こえてきます……赤い色が好き？それとも青い色が好き？その質問には決して答えてはいけません。赤が好きと答えた人は、怪人赤マントに血まみれにされる。青が好きと答えた人は水に沈められる。そんな恐ろしい噂が日本中に広まりました。だから夕方、日が沈み始める時間には、赤マントに出会わないよう子供たちは急いで家に帰っていたのです。時が過ぎ去るにつれ、そんな噂も忘れられ、怪人赤マントの話は全然聞かなくなりました。しかし、怪人赤マントはいなくなったわけでは有りません。夕暮れ時に人気の少ない路地裏を歩いていると、時々後ろから怪しい笑い声が聞こたような気がします。

　　第２場

　　　　　　　スポットから地明かりへクロスフェード
　　　　　　　桃子、下手へ向かってゆっくり歩く
　　　　　　　緊迫したＢＧＭ
　　　　　　　足音
　　　　　　　桃子、振り返る
　　　　　　　誰もいないことを不審に思いつつ、桃子再び歩き出す
　　　　　　　足音
　　　　　　　桃子、また振り返る

桃子　　誰！？

　　　　　　　声だけで

マント　ふふふ……ふはははは。はははは！

　　　　　　　ＢＧＭ止まる
　　　　　　　ドラムロール
　　　　　　　上手スポットカットイン
　　　　　　　同時に赤マント、上手から登場、スポットの範囲に入る

マント　レディースエーンジェントルメン、ボーイズアンドガールズ。夕日が差し込む路地裏に、どこからともなく現れた。赤い色か青い色、あなたはどちらが好きですか。さあさあ皆様ご覧あれ、ご町内のスーパースター！みんなのアイドル！怪人！あーかーまーんとぉぉぉぉ……
桃子　　却下。
マント　え？なんで？
桃子　　演出過多なのよ。
マント　いいだろ。その方がみんな覚えてくれるんだから。
桃子　　ご町内の変な人としてね。
マント　変な人とは失礼な、オレは恐怖の怪人赤マントだぞ！
桃子　　さっきのアナウンスに怪人要素がまったく見当たらないんだけど。
マント　ごちゃごちゃうるさいな、じゃあどうすれば良いんだ？
桃子　　んー、もっと、怪人っぽいオーラを出していけば良いんじゃないかしら。
マント　怪人っぽいオーラね。……ふふふ……遠からんものは音に聞け、近くは寄って目にも見よ。我は日本全土を恐怖に染める怪人赤マントなるぞ！
桃子　　古い。
マント　えー、そうかな。意外にいい線行ってると思ったんだけど。
桃子　　なんか、ノリが昭和。
マント　仕方ないだろ、オレ昭和初期の都市伝説なんだから。
桃子　　だからこそ、もっと平成の流行に乗らないと。
マント　最近のトレンドなんて知らねーよ。
桃子　　そんなに難しく考えなくていいのよ。ほら、いま若い人たちの間でブームになってることとか考えれば。

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